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☆  あい らぶ    LAB   ☆

☆ あい らぶ LAB ☆

 



  11月17日月曜日

      午前6時25分 獣医から電話。
      「先ほどから急に容態が悪くなりました。
      今、危篤状態です」
      すぐに着替えて家を出る。
      この時間帯、ダーリンにとっては魔の時間だ。
      朝の薬も飲んでいない。でもそんなことは言っていられない。
      車の中で薬を飲んでもらう。
      とにかくとにかく、病院へ急ごう。

      ゴンタっ、逝っちゃダメだよ。
      一人で逝かないで。せめて、せめて私の腕の中で。
      もう少し、もう少しだけ頑張って・・・ゴンタっ!!


      10分後到着。
      診察室へ走る。診察台の上に横たわるゴンタ。
      間に合ったのか。
      先生が「残念ながら・・・」と言うのが聞こえた。
      「ガンプ・・・ガンプ・・・・・・ごめん、間に合わなかったぁ・・ごめん」
      ゴンタにすがり付いて泣きじゃくってしまう私。
      刻々と冷たくなっていくのであろう、ゴンタの顔の固さを手でしっかりと感じながら。
      どうして・・・どうして・・・・ごめんね、ゴンちゃん。
      ゴンの頭を撫でてやっていると、獣医妻が私の手を取り
      「ここ、まだ温かいから」と言ってゴンタの腋の下に私の手を入れてくれた。
      温かい・・・・ゴンタの体温がまだある。

      ゴンちゃん、私の声が聞こえる?
      一人で逝かせちゃったね。
      もう少し、あとほんの少しだけ待っててくれれば良かったのに。

      先生がダーリンに、お腹の中の写真を見せながら
      手術の時の状況を説明している。
      確かに、腸の癒着はかなりひどいものだとわかる。
      もういい・・・もういいです。
      ゴンタはもう痛みがないんですよね。
      もう苦しまなくてもいいんですよね。
      「ありがとうございました。お世話になりました」
      泣きながらそう言うのが精一杯だった。

      「ゴンちゃん、おうちに帰ろうね」と私が言うと
      ダーリンは車からタオルケットを持って来てくれた。
      うちへ帰ってキレイにしてあげよう。
      私達の手でちゃんときれいにしてあげるからね。
      つらかったね、よく頑張ったね、ゴンタ。

      ゴンタの住処である会社まで帰る車の中、私達は何も言葉に出来ず
      ただただ泣いていた。
      ゴンタが一番長く暮らした場所、それは会社のハウスの中だ。
      階段下で、少し奥まったところにあり、ゴンタはとても気に入っていた。
      叱られていても「ハウス」って言われると「ホイホイッ」て感じで嬉しそうに
      さっさとハウスに入ったっけ。

      ゴンタハウスの前で、チビタとキンタに対面させる。
      チビタは瞬時に何がゴンタの身に起きたか察知したようだ。
      少し近づいてクンクンしたあとは目をそむけるように哀しい顔をした。
      そして遠巻きにゴンタのことをジーーっと見ている。

      キンタは“死”と言うものに向き合ったことがないからか
      何があったのかわからないような、動物の本能でわかっているような、
      そんなどっちつかずの態度でうろうろしている。
      ゴンタの顔に鼻を近づけてクンクン。
      「ゴン兄ちゃんどーしたん?起きてよ。遊ぼ」とでも言っているようだ。

      ゴンタの身体をキレイにしている間もチビタは近づいてこない。
      かなりショックだったようだ。無理もない。8年も仲のよい夫婦のように
      あるいは兄妹のように寄り添って生きてきたからね。

      血液や便など体についている汚れをきれいに落としてやる。
      ゴンタの身体がだんだん冷たくなってくるのがわかる。
      少しでも体温を感じられる間はじっとゴンタの体に手を当てた。
      徐々に手足が冷たくなり、硬直が始まっている。
      荒れたお尻ももう痛みを感じなくていいんだね。
      キレイにして脱脂綿をつめてやる。
      おチンチンや、切ったお腹から体液がにじみ出て来る。
      そこにトイレシートを当てて、タオルケットにくるむ。
      花壇に行き、ゴンタが好きだったローズマリーの新しい茎を
      ゴンタの年の数だけ切ってきた。胸の上に置いてやる。
      ほら、いい香りがするでしょ。ゴンちゃん、これ好きだったもんね。


      こんなに身体の大きなわんこ、それも死後硬直して
      四肢が硬くなってしまっている状態で入れられる大きな箱がない。
      箱に入れたとしてもふたりで運ぶことは難しいだろう。
      たまたま家に赤ちゃん用のクーハンがあったので
      それに入れてやることにした。それでも手足、尻尾ははみ出している。
      でもこれで何とか運びやすくなった。
      泣きながらでもちゃんと最後まで面倒を見てやりたかった。
      普通は病院でやってもらえるのかもしれないけれど
      やはり自分たちの手で送ってやりたいから。


      きれいになったところでまたチビタとキンタにご挨拶。
      キンタがゴンタの顔をペロペロしてくれた。
      チビタはジッと身体を硬くしたまま、でもゴンタの顔をちゃんと
      最後は見てくれた。
      ゴンタ・・・わかるでしょ、キンタとチビタがお別れを言っているよ。
      あなたたちは言葉にしなくてもちゃんとお別れ出来ているのかな。


      次は会社の社員さんたちとのお別れ。
      「ガンプ、どうして・・・・」突然のことに皆一様に、驚きを隠せない。
      Mr.バウリンガル君が社内に居てくれてよかったよ。
      最期のお別れが出来てよかったね、ゴンちゃん。
      皆、ありがとう。うるさく吠えて「電話の声が聞き取れないっ!!」って
      叱られたことも一度や二度ではないけれど。
      皆、寂しがっているよ。ゴンタ、いい子だったからね。


      車に乗せて葬儀場に向かう。
      その道すがら、ゴンタと縁があった場所に寄っていく。
      まずは春まで私達が住んでいたおうち。
      ゴンタ、見えるでしょ、ここで大きくなったよね。
      ゴンちゃんがうちの子になってからしばらくはここで暮らしたもんね。
      小さかったね、ゴンタ。可愛かった。大人しくて良い子だった。
      やんちゃだったけど、聞き分けも良くて。
      コロコロと転がるように毎日ジャレて遊んで、夜はいつも
      とうちゃんのお布団の中でひとつの枕で寝ていたね。

      大きくなって会社の倉庫の中で暮らすようになってからも
      ときどきこのおうちに来て泊まって行ったね。
      手に大怪我をしてしばらくおうちで療養していたとき、
      包帯の上から靴下を履かされて、それがイヤでイヤで
      しかたなかったけど、叱られながらはめてたね。
      あの時も痛かっただろうに「痛い」なんて一度も言わなかったね。
      ただダイニングテーブルの下でブスッとしてた。

      うちにお泊りの時はいつも私のベッドに上がって
      一緒に寝たね。すぐにお布団をぶっ飛ばして出て行くけど。
      そんな思い出いっぱいの古い我が家を通り、次は
      一時期過ごした会社の店舗兼倉庫。
      ゴンちゃん、これからここは新しいお店になるんだよ。
      応援しててね。

      そして市役所の支所へ。
      ゴンちゃんを葬儀場に連れて行くための書類をもらう。
      簡単な作業だ。事務的に終わる。
      それから近所のお花屋さんに寄って花束を作ってもらう。
      「ワンちゃんが死んじゃったのでお供え用のお花を・・・」と
      言うとちゃんと花束にリボンもつけてくれた。
      クーハンの中に入れてやる。

      葬儀場に着いた。
      いよいよゴンタとのお別れ。本当にこれで最後だ。
      一度だけタオルケットを少し開けて顔を撫でてやる。
      身体はここでお別れだけど、心はずっとずーーーっと
      私達の中に棲み続けてくれるはず。
      もう苦しまなくていいんだからね。
      ごめんね、ゴンちゃん。頼りない飼い主だったね。
      ありがとう。あなたのことは忘れない、絶対に。

      本当にありがとう。

      また会う日までさようなら。



最後に。

egao





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